Kouna Hime Inc. · 『2050年までに実現したい政策』特設

一棟

統合公共施設 — まちのすべてを、ひとつの建物に温泉・図書館・病院・オフィス・学校・物流・データセンターを一体で設計する構想

2019年の著書『2050年までに実現したい政策』は、人口が減っても誰もが最高水準で働き・学び・暮らせるように、まちの機能を一棟の建物に統合する「公共施設の総合化」を提案しました。このページは、著書 244〜295頁「新しい暮らし方 公共施設の設計」の章を、原典の数字のまま引用整理した特設紹介です。

全国 2,500〜5,000箇所 + 海外主要都市 200箇所· 徒歩10分圏 利用者 約2万· 延床 220,228· 概算建設費 1,186.2億円/棟
それでは、一つずつ紹介して参りましょう。未来の施設へようこそ。『2050年までに実現したい政策』252p

コンセプト

Four Principles

著書252頁に掲げられた4か条を、原文のまま引用します。

  1. 全ての大人、子供、お年寄りが一同に利用することのできる施設。
  2. 普段の暮らしの中で一番長い時間滞在してもらうことのできる施設。
  3. 国内外どこにいても最高水準の環境で働き、学び、創造することのできる施設。
  4. 需要に合わせフロア用途を柔軟に変更し、長期的に活用することのできる施設。

なぜ一棟にまとめるのか

Population · Time · Energy

人口 — 4,576万人の視点

2050年の総人口ではなく「2050年生まれの52.7万人 × 寿命87年 = 約4,576万人」から逆算する。著書は2,000万〜5,000万人でも成り立つ社会設計を前提に置き、人口密度に依存しない公共インフラを求めました。(245〜249p)

時間 — 年間労働960時間

労働時間を現在の半分にする時間政策とセットの構想。通勤・通学をゼロに近づけ、家事・買い物を施設が引き受けることで、1日あたり最大3時間47分を捻出します。職住学一体はそのための建築的な答えです。(249〜250p)

エネルギー — 徒歩とコジェネ

確実にエネルギーがゼロになる交通手段は徒歩。暮らしを徒歩10分圏に収め、熱と電気は地域エネルギーセンターでまとめて供給します。余った建物の床面積を空調し続ける非効率も、総合化で解消します。(246〜248p)

高度人口集中地区

Walkable Density

高齢者でも歩ける徒歩10分圏(半径800m・約2.01k㎡)に、昼間人口密度1万人/k㎡——著書はこれを「高度人口集中地区」と名づけ、公共施設が中核となって徒歩圏内に2万人以上が暮らす都市の単位を提案します。

可住地人口密度1万人/k㎡以上の自治体は全国でも15市区(特別区・大阪市・川崎市・武蔵野市など)に限られます。東京や大阪の中枢に準じた「賑わいの密度」を、大都市への集中ではなく、施設を核にした徒歩圏として全国2,500〜5,000箇所・海外主要都市200箇所に整備する構想です。(250〜252p)

施設ガイド

19施設Facility Guide

著書252〜292頁の各設計節から、施設ごとの要点と数字を抜き出しました。数字はすべて原典の設計値です。

やすらぐ

6施設 Bathe · Eat · Live

温泉を暮らしの真ん中に置き、食事・入浴・住まいの支度を施設が引き受けることで、家事にかかる時間を外部化します。

温泉・地下大浴場

地下2〜3階
洗い場 1,688名浴槽 64箇所 1,056㎡泉質 26種

地域の源泉を活用し、療養泉(治療に有効な成分を含む温泉)を普段の暮らしの中に置く設計。温泉分析書(温泉法施行規則第10条)を確認して体調に合わせて入浴します。洗い場は1日最大45,576名の容量を確保し、男女で地下2階・3階を分けて動線を効率化。混雑状況は給湯装置の使用状況からリアルタイムで案内します。

出典 253〜255p

屋上露天風呂

7〜8階
定員 3,094名2フロア 4,951㎡

7階・8階にフロアごと男女別で設け、1日ごとの入れ替え制。洗い場から屋根のある浴槽に直接入り、天候に応じて屋根のない部分へ進めるようにして、乳幼児や高齢者の温度変化・転倒を防ぎます。直通エレベーターで男女が交錯せずに移動できます。

出典 255p・291p

プール

地下3階(天井高9m)
25Mプール 8コース多目的 3コース

7mの柱スパンを維持した温水プール。プール共用の低温・高温サウナと接続します。50Mプールより、利用頻度の多いビュッフェと温泉を優先した割り切りも著書に明記。リゾート機能を持つ屋上プールの設置も検討課題として挙げられています。

出典 256p

ビュッフェ

地下1階
カウンター 320席ダイニング 2,224席

「全国どこでも最高水準の食事体験を」。地下1階の中央に厨房を集約し、トラック直送で食材を搬入。対面カウンターは料理分野ごとに配置し、ダイニングはタッチパネル注文・ロボット配膳。郷土料理・各国料理と地元産酒類を重視し、地域飲食店の調理人を集約してレシピ・店舗ブランド・食文化を維持拡大します。

出典 284p

居住施設・客室

1〜6階
744〜1,560名一人当たり 25〜50㎡

ホテル利用可・家具備え付け・1日単位が基本。住生活基本計画の居住面積水準を満たします。部屋は研究・体験・業務・リラックス・地域・国際・趣味の7系統のコンセプトルームで、国内外の違う土地に住む予行演習やホームシック対策にも使う発想です。

出典 263p

ロッカー・パウダールーム

温泉接続フロア
ロッカー 幅50×高200cmパウダー 18ブース

宅配ロッカー・郵便受けを兼ね、ICカードの個人認証を鍵にします。大型スーツケースが入る寸法。更衣後はそのまま温泉・露天風呂・プールへ。パウダールームは男女各フロアに国内外主要メーカーの化粧品・ケア用品を揃えます。

出典 285〜286p

まなぶ・つくる

5施設 Learn · Create · Play

自ら学ぶ場所をコミュニティの中心に。図書館を建物の中央に据え、学校・スタジオ・アリーナが取り囲みます。

図書館

1〜4階・建物中央
蔵書 240万冊閲覧 2,334席

「自ら学ぶ場所をコミュニティの中心に置きたい」——図書館が施設の中央にある理由です。全面開架式で60万冊/フロア。日本十進分類法の全分類に棚を用意し、歩きながら図書館自体を百科事典のように使える配架を構想。蔵書数は大阪府立図書館(全国7位)級に相当します。

出典 259〜260p

学校(高等教育学校)

施設全体がキャンパス
人口2万人に 1校共通試験 1万〜10万科目

公共組織法と新しい教育制度のもとでは「オフィスと学校の区別は無きに等しい」。A地区の施設にA小学校・A中学校・A大学がテナントとして入居するイメージです。固定クラス・学年・カリキュラムを廃し、オックスフォード型の少人数個別指導と、日本十進分類法ベースの共通試験(受験料無料・年齢国籍不問)で学びを支えます。

出典 264〜268p

スタジオ(9種)

各階
9系統収録スタジオ 192㎡

クッキング・放送音楽・情報・映像・被服・工作・美術・文芸・トレーニングの9系統。専門学校・職業訓練施設・公民館の機能を統合し、作った料理はビュッフェへ、作った服は商品販売へ展開。コミュニティFMや地域メディアの中継局・公開スタジオの機能も担います。

出典 257〜258p

アリーナ

6階(天井高14m)
58m×58m 3,364㎡最大 4,000〜5,000席

国体に活用できる水準で、概ね10〜30万人規模の中央体育館に相当。固定観客席2,000席(8〜9階)と可動席2,000席(6〜7階)を併用し、バスケ2面・バレー3面・バドミントン10〜12面を配置可能。コンサートや展示イベント、議場としての運用も考慮し、屋上テラスを観戦・屋台スペースとして開放します。

出典 258〜259p

自動書庫・共同実験室

個人資料も収蔵国内外とオンライン同時運用

所有する本や紙資料、利用頻度の低い資料を自動書庫に預けられます。共同実験室は教育研究施設の機能を含み、小学生から研究者までがシェアして利用。海外や国内の他の実験室とオンラインで同時運用できるよう通信環境を強化します。

出典 252〜253p

はたらく・ささえる

8施設 Work · Care · Logistics

オフィス・病院・物流・エネルギーまで。人口密度に依存せず、どの地域でも最高水準の仕事と基盤を提供する層です。

オフィス

1〜6階
9,600席個室〜12名スペース

フリーアドレスで、在席状況は電子掲示板とアプリでリアルタイム共有。海外に設置した公共施設と時差を活かして業務のバトンを渡す「ワークリレー」で24時間体制を組みます。各チームの成果物を紹介する展示スペースを設け、分野間のコラボレーションを促進します。

出典 278〜279p

窓口・ラウンジ

各階
窓口 2,304名コールセンター 936名

受付の周囲にラウンジ(全体672名)を設け、雑誌や新聞、セルフのドリンクサービスを用意。オンライン窓口・コールセンターは中央部に配置します。玄関ゲートは建物の四隅に4カ所、自動改札機に準じたICカード個人認証で、災害時・イベント時の大人数の入出場にも対応します。

出典 280p

病院

オフィス転用で150〜250床
三段階の拠点地区・地域・地方

医療機能を地区拠点(500〜2,000人・かかりつけ)・地域拠点(2万人・二次医療圏)・地方拠点(交通60分圏・先進医療)の三段階に分けて整備。居住施設と一体化して「住みながら治療する」発想で病室の概念を撤廃し、浮いたコストを24時間シフトの人員確保に回します。地下ターミナルから直接搬送できる救急動線を確保。

出典 261〜262p

商業・物流センター

地下2〜3階
最大 1,049,760SKU書類 2万FM 収納

自動倉庫型ピッキングシステム(オートストア)で100万SKU超を収納し、大型モールに匹敵する品揃えを人口規模に関係なく実現。アプリから注文すると個人宅配ロッカーへ届きます。倉庫の一部を地域の企業や個人で共有し、名義変更だけで売買が済むフリーマーケットとしても使う構想です。

出典 287〜290p

データセンター

地下
1,000ラック3,600㎡/棟

2050年時点で全国合計1,800万㎡の地域分散型データセンターを整備し、国内データセンターのバックアップとして機能させます。SNSやクラウドが外国企業に委ねられている現状を踏まえ、全ての国民がデータ管理・利活用能力を持つための基盤と位置づけます。

出典 290〜291p

地域エネルギーセンター

設置面積 3,370㎡
コジェネ 4.5万kW総合効率 72.7%

ガスエンジンコジェネレーション6台で熱と電気をまとめて供給する地域熱供給方式。総供給面積93万㎡は、六本木ヒルズ(六本木エネルギーサービス)の実績を上回る規模です。再生可能エネルギーの調整力と、災害時の業務継続(地域単位のエネルギー需給平準化)を兼ねます。

出典 283p

駐車場・バス/トラックターミナル

地下
駐車 248台ターミナル 64台

地下トラックターミナルで中心市街地の荷捌き負担とドライバーの労働時間を削減。路線バスは固定停留場でなく空きブースへ随時誘導し、正方形の車路を一方通行で循環させます。出入口は交差点を避けたアンダーパスとし、EV充電・水素スタンド・燃料ステーションを併設します。

出典 281〜282p

交通アクセス・庭園

地上
前面道路 幅員30m以上歩車分離

地上部分は歩行者交通に限定。好天の日は樹木とベンチ、カスケードや噴水のある庭園を通って入館し、悪天候の日は歩道のエレベーターから地下経由で直接入れます。夜間のライトアップと季節ごとの装飾で文化的な景観を確保します。

出典 292p

建物のすがた

Section & Specs

地上6階(一部9階)・地下3階。景観のため31m高さ制限(旧百尺規制)を守り、賑わいは地下と低層に集めます。まずは設計原図の断面図をご覧ください。

A-A'断面図 公共施設標準設計。中央にメインアリーナと図書館、両翼にホテル個室棟と医療棟、地下に温水プール・大浴場・ビュッフェ・データセンター・エネルギーセンターを配した階段状の建物断面
A-A'断面図 公共施設標準設計(津波浸水想定区域外)— 幅220m・地上高39m+地下深15m。中央の吹き抜けにメインアリーナと図書館を重ね、両翼にホテル個室棟と医療棟、地下に温水プール・大浴場・ビュッフェ・物流とエネルギーの基盤を収めます。著書の設計原図より。クリックで拡大。

フロア構成(断面図より)

  • 屋上ヘリポート・機械室・サーバー室
  • 6〜9階メインアリーナ大ホール(吹き抜け)・固定観客席(9階・テラス併設)・移動観客席(6階)・露天風呂(7〜8階・男女フロア別)
  • 5階サブアリーナ小ホール・業種別オフィスラウンジ
  • 1〜4階図書館・研究室・閲覧室(1階 人文科学系 → 2階 社会科学系 → 3〜4階 自然科学系)・分野別/職種別オフィスラウンジ
  • 低層翼棟ホテル個室棟(シングル・ツイン・個室オフィス)/医療棟(1階 地域保健医療センター・2階 救急医療センター・3〜4階 療養病棟)・屋外備蓄倉庫・テラス
  • 1階バスターミナル・荷捌乗降場(両翼)・屋台横丁の露店
  • 地上庭園・広場・カスケード・噴水 — 歩行者専用のアプローチ
  • 地下1階オーダービュッフェ・洋風/和風ダイニング個室・クッキングスタジオ(飲食店共同調理室)・音楽/放送/映像/絵画/工作スタジオ・フィットネス・自動商品倉庫
  • 地下2階温水プール(地下2〜3階吹き抜け)・男性大浴場・更衣室・郵便宅配ロッカー・データセンター・電話交換室
  • 地下3階女性大浴場・更衣室・コスメビュッフェ・エネルギーセンター(機械室・発電室・空調室)・自動書庫・共同保管倉庫

施設設計の基準(293p)

構造SRC 鉄骨鉄筋コンクリート構造(一部プレストレストコンクリート)
階数地上6階(一部9階)・地下3
敷地面積25,60041,800㎡(30m道路に1〜4面接道)
建築面積地上 10,000㎡ ・ 地下 48,400
延床面積合計 220,228㎡(屋上除く・地下1〜3階 各約48,000㎡)
建物高さ地上高 39.0m ・ 地下深 15.0m — 31m高さ制限(旧百尺規制)を景観上重視し、隣接建物に冬至でも4時間以上の日照を確保
柱スパン基本 7m×7m(中央部 8m×8m・6階アリーナ 58m×58m)
利用定員合計 21,236名(オフィス9,600・図書館2,334・ビュッフェ2,554・ラウンジ2,076・アリーナ2,048 ほか)
駐車台数合計 248台(小型車乗降場24・大型車80・小型車144)+ ターミナル64台

費用と工程

Cost & Timeline

国土交通省営繕部「新営予算単価」の鉄骨鉄筋コンクリート造単価をもとにした概算です。基本設計の倍を超えないかどうか、という水準感で1棟あたり1,186.2億円と見積もられています。(294p)

基本設計(新営予算単価 256,800円/㎡)606.4 億円
自動倉庫(オートストア)160〜639.5 億円
書籍119.3 億円
アリーナ100 億円
自家発電設備54.4 億円
データセンター33.4〜43 億円
デスク端末24.4 億円
温泉20 億円
個人端末15 億円
エレベーター15 億円
エスカレーター13.3 億円
プール10 億円
ロッカールーム10 億円
ビュッフェ5 億円
合計(概算)1,186.2 億円

100年の建物・60年の償還

建物は耐用年数100年で設計し、建設国債で60年償還。建設業者の施工能力を考慮して、2050年頃から30年程度をかけて建設していく工程です。(295p)

財源は資産課税へ

固定資産税を平等に活用し、租税負担を資産課税へ転嫁。災害リスクの多い土地から金融資産・投資資本・人的投資へのシフトを促す——施設の集約はその布石でもあります。(295p)

配置は地道に

継承施設・継承組織をリスト化し、市区町村別人口予測から必要施設数を割り出す。「Googleマップや地理院地図に図形を書いて面積をひたすら計算します」という手仕事も原典の一節です。(295p)

著書とHIMEへの継承

From the Book to HIME

『2050年までに実現したい政策』こうな 著(2019年12月30日 初版・たぴたぴとりっぷ/旅鳥出版・全303頁)。本特設は第2章「新しい暮らし方 公共施設の設計」(244〜295頁)を引用整理したものです。

構想はいまも続いています

著書は「人が集まらなくても、制度が届かなくても、誰もが最高水準で働き・学び・暮らせる基盤を作る」という問いに、法律と建築で答えようとしたものでした。HIMEはいま、同じ問いにソフトウェアとAIで答え直しています。

  • 統合公共施設 → HIME A-Z 26サービス(一棟の機能を、デジタルの棟として実装)
  • 公共組織法(制度のOS) → Lex50 — 50法プロジェクト
  • 共通試験・NDC1万〜10万科目 → W100 知の分類座標(10,000区画の知識OS)

関連特設

W100 — 知の分類座標Lex50 — 50法HIME Systems